汲む

December 31, 2017

 

茨木のり子さんの詩を読むと

背筋がしゃんと伸びるような気持ちになります。

そのあとに、心にとくとくと水が注がれたような思いがします。

 

ちょっと気持ちが落ち込んだときや

逆に暴走しそうなとき(!)

そっと寄り添ってもらえます。

 

「おんなのことば」はそんな詩がたくさん詰まった詩集です。

友人へのプレゼントに何度かこの詩集を選びました。

 

 

「おんなのことば」より一編

 

(おんなのことば 童話屋)

汲む

―Y・Yに―   

 

大人になるというのは

すれっからしになるということだと

思い込んでいた少女の頃

立居振舞の美しい

発音の正確な

素敵な女のひとと会いました

そのひとは私の背のびを見すかしたように

なにげない話に言いました

 

初々しさが大切なの

人に対しても世の中に対しても

人を人とも思わなくなったとき

堕落が始まるのね 堕ちてゆくのを

隠そうとしても 隠せなくなった人を何人も見ました

 

私はどきんとし

そして深く悟りました

 

大人になってもどぎまぎしたっていいんだな

ぎこちない挨拶 醜く赤くなる

失語症 なめらかでないしぐさ

子どもの悪態にさえ傷ついてしまう

頼りない生牡蠣のような感受性

それらを鍛える必要は少しもなかったのだな

年老いても咲きたての薔薇 柔らかく

外にむかってひらかれるのこそ難しい

あらゆる仕事

すべてのいい仕事の核には

震える弱いアンテナが隠されている きっと……

わたくしもかつてのあの人と同じくらいの年になりました

たちかえり

今もときどきその意味を

ひっそり汲むことがあるのです

 

 

 

 

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